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がんの要因とは

突然ですが、そもそも癌の要因って何でしょうか?

一般的には暴飲暴食や飲酒・喫煙・ストレスなどが有名ですよね。でも、それらは原因であって、要因ではありません。 ※原因については、こちらの記事↓をご参照ください。

参考記事 がんの5つの原因

実際「がんの要因って何だと思います?」と聞かれると多くの人が要因ではなく、原因しか挙げられないのではないでしょうか?

そこで、ここでは意外と見落とされがちなガンの要因について、説明します。

がんの要因1:性別

ガンの要因を語る上で欠かせないのが実は性別です。

これは有名な話ですが、癌は男女で「なりやすさ」に明確な差があります。なんと男性の方が癌になりやすいんです。

これは日本人に限らず世界的に共通する傾向なので、生物学的な理由があるとみて間違いないでしょう。

確かに男性は女性と比べて飲酒や喫煙率が高いというのはありますが、それを差し引いても男性の方がガンになりやすいのは間違いありません。

中には「まったく同じ食事・睡眠・仕事をしている男女がいたとしても、おそらく男性の方が癌リスクは高くなるだろう」という研究者もいるくらいです。

性別による癌リスクは男性の方が女性より1.5倍ほど高いと言われています。とくに生活習慣が原因で発生するガンは男性の方が高い罹患率になっていて、胃がんでは約2.5倍、肺がんでは約2.6倍という数値が出ています。

※肝がんのように感染症がキッカケとなることの多いがんも同様です。

なぜ男性は女性と比べて癌になる確率が高いのか? それは同じ外的要因が存在していても、それに対する感受性が女性より高いからだと考えられます。

例えばタバコ1本を吸ったとき、女性なら体への悪影響が1で済むところが、男性だと1.5や2だったりするわけですね。

女性は癌リスクが低くてラッキーというわけでもない

では、「女性は癌のリスクが低くてラッキー」・・・なのかといえばもちろんそんなことはありません。

なぜなら女性は女性で子宮がん、卵巣がん、乳がんなどのリスクがあるからです。

これらは男性なら無縁です。(※乳がんは男性でもごく稀に見られるものの、乳腺の発達の仕方などが異なっているので、ほとんど女性のがんと言って差し支えないでしょう)

女性の方が罹患率が高い癌として他にも甲状腺がんが挙げられます。甲状腺機能が充進するバセドウ病も女性に多い病気ですから、甲状腺に関しては女性の方がリスクに対する「感受性」が強いのかもしれません。

以上のように、がんに関しては男女の性差が歴然としています。しかし、それはあくまでガン別に見た場合、〇〇ガンは男性の方が罹患しやすい、〇〇ガンは女性の方が罹患しやすい、といった程度のものです。

がんの要因2:加齢

二つめの要因が加齢です。

人間の体は高齢になればなるほど長年の悪習慣は蓄積され、遺伝子にも修復できないレベルの傷が蓄積されていきます。となると、ガンになりやすくなるのは当たり前ですよね。

乳がん、子宮頸がん、甲状腺がんなどは、若年層(の女性)の発症もそう珍しくはありませんが、胃がん、肺がん、肝がんなどメジャーなガンは50代に入ってから急激に罹患リスクが上昇します。

そもそも、がんはリスクの量リスクにさらされてきた期間によって罹患するかどうかが決まります。

例えば、いくらタバコが体に悪いからといって、人生でたった一度タバコを吸っただけでガンになることはあり得ません。日常的な喫煙を30年~40年と続けているからこそ、タバコによるガンの罹患リスクが出てくるわけです。

どんな人も加齢は避けようがありませんから、中高年(50代あたり)になってきたら誰もが等しくガンに対する危機感を持つべきでしょう。

年寄りの多い地域はガン患者も多くて当たり前

ちなみに、加齢はガン罹患のリスクを高めるので、著しく高齢化の進んだ都道府県は都市部よりもガン患者数が多くなる傾向があります。つまり、高齢者の多い都道府県は高齢者の数に比例してガン患者も多い、というわけです。

ですから、ガン患者が多い都道府県=健康に無頓着で不摂生、と考えるのは早合点です。

※現在では単純なガン患者数を見るのではなく、高齢化の影響を排除した年齢調整罹患率や年齢調整死亡率をより重視する姿勢になっています。

がんの要因3:遺伝

ガンの要因として、第三に遺伝が挙げられます。

よく「がん家系」という表現を耳にします。確かに、ガンにかかりやすい体質は遺伝するようにも思えます。

2013年にはハリウッド女優のアンジエリーナ・ジョリーさんが遺伝子検査を受け、発がんを抑制するBRCAl遺伝子に変異があるとして乳がんと卵巣がんの発症リスクが高いことが判明しました。彼女は予防の意味で乳房を切除し、その二年後には卵巣・卵管まで切除したため大きな話題になりましたね。

参考:アンジェリーナ・ジョリーが選択した「乳腺切除」 技術が格段に進歩、「美しい」再建できる

上記の例は、遺伝との関連が深いがんと言えます。

しかし、遺伝要因に起因するがんは世間一般で考えられているよりも遥かに少ないと言われています。一説では遺伝が理由のガンは全体の数パーセント以下とまで言われているほどです。 (乳がんや大腸がんなど)

ガンと遺伝の関係について調べた実験

ここで興味深い研究を紹介します。この実験は下記4名について、がんの罹患率を比較調査したものです。

  1. 日本人
  2. ハワイ在住の白人
  3. 米国本土に住む白人
  4. ハワイに移住した日系人

もともと日本人には胃がんが多く、白人には乳がんが多いことがわかっていました。ですから、ガン発生理由の大部分を「遺伝」が占めているなら、4番の人の胃がん確患率は、1番の日本人と似たような数値になるはずです。

しかし、結果は全く異なりました。4番の胃がん罹患率は2番の白人と近い値を示し、乳がんの罹患率では日本人の数値より遥かに突出して多くなったのです。

この統計は、日本人がハワイに移住して当地の自人と同じような生活を送ると、がん罹患の傾向も彼らと似てくるという事実を示しました。

同様の変化は、ブラジルの日系移民にも見られますし、異なる環境で生活する双子では、がん罹患の傾向が異なるという研究結果もあります

つまり、私たちがガンになる要因は遺伝よりも、食生活などの環境要因の方がはるかに大きいといえるわけです。

同じように、夫婦や親族では同じがんにかかりやすいという指摘があります。

とくに肺がんや胃がんでその傾向が顕著ですが、その原因も、家族だと長年にわたって似たような環境(喫煙や食塩摂取など)に身を置くからではないか?と推察されます。

世の中には「自分の両親は共にガンで亡くなったからきっと自分も……」なんて悲観的になる人もいますが、大半のガン生活習慣などに起因することは忘れてはいけませんね。

ガンの遺伝子検査キットを使う手もアリ

遺伝とガンは関連が薄いと言われてもにわかに信じられない人は遺伝子検査キットに頼るという手もあります。

これは唾液などを採取して企業に送ると、 一か月ほどで「かかりやすいガンや生活習慣病を解析する」という触れ込みのサービスです。

近ごろは安価な遺伝子検査が世界的に普及していて、日本でもベンチャー企業などがサービスを展開しています。

法律の定める医療行為には当たりませんが、二万円前後という価格の手軽さもあって利用者はじわじわ増えているそうです。

あと、最近では「リスクの感受性」が癌の罹患を左右するという研究結果も増えてきています。たとえば、喫煙者の肺がんリスクは、非喫煙者のそれに比べておよそ3倍高くなると言われます。

しかし、人によっては2.5倍程度のリスクですむでしょうし、逆に3.5倍ほどのリスクになる人もいるでしょう。

とはいえ、個別のがん予防遺伝子データなどに基づく、個々人に最適化する予防)を実現させるような遺伝子検査の技術も発展途上ですし、がんと遺伝の関係についても、まだわかっていないことが多いのが実情です。

三世代以上も同じがんの罹患が続くようならば、遺伝性のがんを疑いたくもなりますが、基本的に多くのガンは生活習慣の改善によって防げます。 この前提を大事にして、自己の生活と向き合うべきでしょう

がんの要因4:外部リスク

性別、加齢、遺伝の3つは、生き物である以上は避けられない予防対策が困難な癌リスクです

一方で、労働環境や居住環境などの外部リスクによって罹患するガンも存在します。

一例として、2012年に大阪府の印刷会社に勤める従業員が相次いで胆管がんになって9人が死亡するという事件が発覚しました。

参考:SANYO-CYP、胆管がん問題

胆管がんはそれほど多いガンではないので、何かがおかしいと印刷工場を調べてみると、印刷機の洗浄に用いる薬剤が原因だとわかりました。

この例は、「外部要因」によってもたらされるがんの端的な例です。現在では、この集団罹患の原因となった化学物質は労働安全衛生法で規制されています。

ガンを発生させるアスベストや放射線

あの悪名高きアスベストも同じ経緯で規制された過去があります。

アスベストはかつて建築工事などに重宝されましたが、アスベスト粉塵の多い職場で働いていた労働者に中皮腫が多かったことから、2006年に全国的な規制へと発展しました。

中皮腫とは、肺などを覆う胸膜や心臓を覆う心膜などにある中皮細胞にできるガンのことです。

アスベストのように、極微小で先が尖っている物質が体内に取り込まれ、呼吸で肺が伸縮するたびに中皮細胞に刺激を与えると、最終的に細胞がガン化してしまいます

つまり、この場合の原因は化学成分ではなく物理的な刺激ですから、アスベスト以外の粉塵も中皮腫の原因となり得ます。

放射線もガンを発生させる

最後に、東日本大震災以降注目を浴びるようになった放射線もガンの代表的な外部要因です。

2011年には福島第一原子力発電所事故が発生し、その影響が危惧されましたが、現在、発がんリスクの恐れがある地域には立ち入ることはできません。

また、子どもの甲状腺がんが増加したとの声も上がりましたが、スクリーニング検査による調査の結果から「増えている」と断定するのは勇み足なようです。

ここで紹介したような「外部要因」は、ほとんど個々人のコントロールの埒外にあるため、過剰に心配してしまうのも理解できます。

しかしこうした要因は、行政が責任をもってがん統計を環境モニタリング的に活用して、リアルタイムに「監視」して対応すべき問題です。

一国民としては冷静に状況を注視し続けましょう。

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